会いたい

と、強く強く思う。触れたいしキスがしたい。思いとどまるのは、彼女がいるからだ。
美少女、という形容詞がびっくりするほどにあう、丸い瞳に薄紅色の頬をした、不器用でわがままでさみしがりやな女の子。彼女が傷つかなければいいと、思うのより強く、早く別れてほしいと願っている。そんな自分がいやだ。
誰かが傷つくより、自分が傷ついたほうがいい。だから結局、別れないでいてほしい。けれど、会えないのはつらい。彼にとって形式にすぎないとしても、彼には恋人がいるのだ。
会おうなんて、それも、会いたいだなんて、言えるわけがない。きちんとした理由もないのに。
今すぐに泣き喚きたい、帰り道にインターホンを押しかねない気持ちを押し殺して、泣き喚いて、いっそ悲しみに酔い痴れてしまいたい。会いたい、今すぐに会いたいよ。

そんなときに、気軽に会える関係になりたいだなんて、わたしにとってそれは恋人でしかない。帰り道が怖ければ簡単に呼び出して、ひとりの夜がさみしければ簡単に会いに行ける関係に、なれないかなぁと君は言う。
ひとりの夜のさみしさを、埋めてくれるのは恋しい人だけだということを、わかって言っていたのかな。そうだとしたら、期待してしまう。そうじゃないなら、無神経だ。真夜中に甘えるなら、わたしは恋人として甘えたい。淋しいから、と、簡単にだきついて、同じベッドでねむりたいよ。